株式会社第一科学

湿度の表し方

はじめに

私達の生活している環境の中で、湿度とか水分とかは、よく耳にする言葉であり、また、非常に大切な量でもあります。しかし、あらためて「湿度」とは・・・と問いかけられると「蒸し蒸しする」「じめじめする」「からっとしている」等々の言葉で表現される程度であり、温度のように○○℃という具体的な数値は、なかなか会話のなかには出てきません

以前は、湿度は気象上の資料の一つとして利用されていただけですが、最近では工業上、非常に重要な量となり、しっかりと数値で表す必要性がでてきました。そのためにはどういう機器で測定したら良いのか、また、その機器をどう管理していくのが良いのか…「湿度」についていくつかの知識を持つことが大切です。

ただ残念なことに、この「湿度」についての測定方法の発展は、他の物理量の測定方法に比べ遅れているのが現状であり、精度の良い測定機器による測定がきるようになってきたのは近年になってからのことです。本コーナーは、書店でもなかなか解りやすい「湿度」の解説書がない、また、いくつかの文献も発刊、発表されてはいますが、内容が非常に難しい、専門的すぎるということもありますので、できるだけ解りやすく、いわゆる初心者の方々を対象として「湿度」の基礎知識について説明します。

湿度の表し方

湿度とは、一般的には「この空気がどれくらい湿っているか。」「この空気にどれくらいの水分が含まれているか。」という表し方をしますが、これで満足していては一人前の湿度屋さんにはなれません。湿度を扱っていく上では、様々な用語が出てきます。ここでは、それらの用語の説明を含めて湿度を表します。

それでは、もう少し違う言葉で湿度を定義してみましょう。

湿度とは「ある気体中に含まれる水蒸気の質量またはその割合。」と定義します。ここに出てくる水蒸気は、気体の中に気体の状態で存在する水蒸気(水分)を指し、小さい水滴や氷片でも、液体、あるいは、固体となって存在するものは除外します。

少し話が難しくなってきました。
それでは、次の問題を考えてください。

問題

右図の様にヤカンに水を入れ、沸騰させます。
当然吐出口は図の様な状態になります。
さて、湿度はどの部分で定義するのでしょうか?

正しい所に◯をして下さい。

湿度を表現するためには、様々な専門的な用語があります。ここでは、代表的な用語をご説明いたします。

代表的な用語

  • 【相対湿度 Relative Humidity】……U

    天気予報などで湿度と呼ばれるものは、この相対湿度を意味する場合がほとんどです。相対湿度とは、ある温度での気体中の水蒸気圧とその気体の飽和水蒸気圧との比を100分率で表します。(飽和水蒸気圧とは…後程出てきます。)単位は、 % を使用します。(他の単位と混合して使用する場合、%RHを使用するときもあります。)

  • 【絶対湿度 Absolute Humidity】……dv

    ある温度での気体の単位体積中(1㎥)に含まれる水蒸気の質量(g)を表します。単位は、g/㎥を使用します。ただし、空調業界などでは、次の混合比を絶対湿度と呼ぶこともありますのでご注意ください。

  • 【混合比 Humidity Mixing Ratio】……r

    水蒸気以外の空気(乾き空気)1kgに対し、何kgの水蒸気が存在するかを表します。温度、圧力、体積が変化しても水蒸気の量が変化しなければ、この混合比は変わりません。単位はkg/kgを使用します。空調業界などでは、この混合比の事を絶対湿度とよび、頻繁に使用します。

  • 【飽和水蒸気圧 Pressure of satulated water vapor】……es

    気体中に含まれる水蒸気の量には限界があり、これ以上含まれない限界を飽和と呼びます。この時の水蒸気の圧力を飽和水蒸気圧と呼び、この値は、温度、圧力により変化します。また、0℃以下においては、水と共存する場合、氷と共存する場合により値は異なりますので注意が必要です。

  • 【露点/霜点 Dew Point/Frost point】……td

    気体の温度が高ければ高いほど多くの水蒸気を含むことができます。水蒸気を含む気体を冷却していくと、水蒸気の量は変化しませんが、相対湿度(%RH)は上昇し、ある温度において100%RHとなります。この状態を飽和状態と呼び、この気体においては、これ以上水蒸気を含む余裕がない温度であることを示します。つまり、これ以上冷却をすすめると、水蒸気の一部が凝縮し、露(水)となり、外部に現われてくるからです。この温度をその気体における露点温度と呼びます。当然、水ですので、0℃以下では霜(氷)となって現われてきます。この霜の状態で現われる点を霜点と呼び、露点と区別しています。