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室内環境条件を解く!
室内の温熱環境条件や熱環境の人体影響などについて紹介していきたいと思います。
古来より日本の建物は、その気候風土に合わせて、日射を遮り、風通しをよくし、かつ吸湿性のよい材料を用いることにより、蒸し暑さを和らげるようつくられていました。冬は建物全体を暖めることはせず、いろり、こたつ、火鉢などにより身体の一部を暖める、いわゆる暖身が行われていたに過ぎませんでした。
暖房といえる機器が一般住宅に登場したのは、昭和30年以降、石油の大量消費時代を迎えてからの、灯油ストーブの普及がはじまりです。 近年では、生活水準向上、住宅構造の洋風化などに伴い、冷暖房機器の技術開発が進み、室内環境改善への要求が高まりつつあります。人間が建物の中で生活、休息、その他の行動をスムーズに行なっていく際の必要条件として、快適な温熱環境があげられます。寒すぎる、暑すぎるといった建物内では、居住者の生活が快適で健康的であるとは言えませんね。
従来、室内環境の設計、評価は様々な環境の物理的数値が、ある範囲になるように行われてきましたが、しかし、熱負荷や空気温度(気温)に主眼を置いて、人間的要素がここではまだ登場していませんでした。
人間は空気のみを感じているのではなく、人の活動量、着ているものによってもかわってきます。
快適な温熱環境を創造するためには、室内環境の物理的要因とともに、人のもつ特性を十分考慮する必要があったのです。
そこで、室内環境を評価するにあたり登場したのが、PMVやSETと呼ばれる指標でした。現在最もポピュラーとされています。
PMVとは何か?
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PMVとは、Predicted Mean Vote の頭文字をとって名付けられたもので、日本では『平均予想温冷感申告』と訳されています。PMVは、温熱環境に関する空気温度、放射温度、気流、湿度といった物理的要素と、着衣量、活動量(代謝量)を示す人間的要素の6つがどのような複合効果をもつかを評価する指標です。1984年にISO─7730として国際規格化されました。これは次に示されるような-3から+3の数字で表すことができます。
また在室者が暑い寒いという感覚をもつとき、どのくらいの人がその環境に不満かを示すPPD(予想不満足者率)という考え方があります。PMVで全ての熱的快適性を評価できると考えられているようですが、PMVで表されるのは温冷感で暑い寒いしか予測できません。従ってPMVは必要条件であって十分条件ではないのです。注意!
+3 暑い +2 暖かい +1 やや暖かい 0 どちらでもない -1 やや涼しい -2 涼しい -3 寒い
SET*(Standard New Effective Temperature)
PMV=温冷感で暑い寒いしか予測できない。との湿度に対する欠点を補うため、PMVに新有効温度ET*と呼ばれるものを取り入れることによって提唱されたのがSET*(Standard New Effective Temperature)です。
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ET *(新有効温度.New Effective Temperature)
人体と環境との熱平衡式から導かれている。気温・風速・湿度・熱放射の組み合わせを〔気温=周囲面〕の温度(平均放射温度)、静穏気流、湿度50%の時の気温で表現するものであり、快適の点で、生活実感に近いものとなっている。快適な温度範囲は22.2─22.6℃ET*(着衣量 0.6clo、椅座安静)である。
もう一つの指標SET*とは?
SET*は、体温調節機能を組み込みモデル化された人体と、その周囲を取り巻く温熱環境との間の熱平衡式に基づいて定義されるET*を基として、異なった条件の温熱環境を比較できるように標準化した温熱感覚指標です。このET*及びSET*は環境側の条件として気温・輻射温・湿度・気流の温熱4要素のすべてと、人体側の条件としての活動量・着衣量を考慮して求められるもので、様々な条件での室内の快適範囲を示す指標として適したものと考えられます。
SET*の算出
ある温熱環境を評価することを考えた場合には、人体側及び環境側の条件が千差万別で算出されたET*の値はそれらの条件でのものとなり、ET*の値のみからその環境が温熱的に快適であるかどうかを判断することは難しいことです。そこで人間側条件の一つである活動量のみを与え、その活動量に見合った標準的な着衣量及び気流速度(対流熱伝達率)を活動量の関数として決定し、ET*と同様にある実際の人体条件・環境条件でのぬれ面積率・皮膚温・放熱量と同一の状況を与えるような相対湿度50%の等温輻射環境の空気温で表したものがSET*なるのです。このように求めたSET*は、2つの人体条件と4つの環境条件のうち、活動量を与え着衣量と気流が標準化され、湿度と輻射温度は固定されるため、SET*の値による快適範囲の設定や相互の環境の比較が容易となります。
快適に生活する
室内温熱快適環境の研究に発足が早かった米国では、米国空調学会の基準である ASHRAE Standardに、快適範囲を下記のように示しています。夏期の条件には、標準着衣量が0.5cloで、温度が22.8~26.1℃、絶対湿度の上限は露点温度で 16.7℃(絶対湿度に換算すると11.8 g/kg)、下限は露点温度1.3℃(絶対湿度で 4.2 g/kg)。また冬期の条件は標準着衣量0.9 clo、温度が 20.0~23.6℃、湿度に関しては夏期と同じであり、これらに囲まれる範囲を快適域としています。
着衣量 | 衣服の断熱性は、クロ(clo)という単位で表される。冬のスリーピーススーツが1clo程度です。 1cloという単位は、皮膚表面から着衣外表面まで0.155m2℃/Wの熱抵抗値です。 |
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絶対湿度 | もともとの定義は、空気の単位体積中にある水蒸気の質量(g/m3)ですが、 現在、環境工学などの分野では、計算を便利にするために湿潤空気中の水蒸気の質量と、乾燥空気の質量の比(混合比)を絶対湿度といいます。 単位、kg/kgまたはg/kg。 |
露点温度 | 湿潤空気中の水蒸気圧に等しい飽和水蒸気圧を示す温度。 空気を水、水蒸気を砂糖に譬えると、コップの水に砂糖を目一杯溶かして、溶けなくなる時、その状態を飽和状態といいます。 しかし、温度を上げれば、砂糖の溶ける量も増えますが、温度を下げれば、砂糖が析出します。その水の飽和状態時温度を砂糖の露点温度と言ってもいいでしょう。 |